こんにちは、オカメです。
以前、車椅子のライオン丸について書きましたので、今日は太郎兵衛について書いていこうと思います。
太郎兵衛(たろべえ)はリオンが使っている杖の名前です。
初代太郎兵衛を購入したのは入院していた病院の売店でした。
確か、リハビリの先生に買っておくように言われたのだったと思います。
ライオン丸も太郎兵衛も名前をつけたのには理由がありました。
当時は毎日毎分毎秒が目まぐるしく過ぎていきました。
リオン本人はその激しい変化も知らないまま、目が覚めたら突然体は動かないし目もよく見えない、そんなところからのスタートでした。
まだ状況すら飲み込めていない中で「リハビリをする」「杖を用意しろ」なんて言われても気持ちがついていかないんじゃないかと、わたしはとても心配しました。
リハビリは最初が肝心です。
早く始めるに越したことはありません。
とにかくすぐにリハビリを受けること、そのためには杖を使うことが必須です。
「誰が杖なんて使うか!」と拒否されてしまったら元も子もありません。
そこで太郎兵衛の登場です。
「この杖は太郎兵衛といいます。わたしが名付けました。意味はありません。ですが、太郎兵衛を使うことには意味があります。太郎兵衛はあなたを助けるものです。とにかく仲良くするように」
・・・といったことを一方的にリオンに告げました。
名前をつけることによって、杖そのものへの抵抗がなくなればいいなという気持ちでいました。
しかし、これらは完全にわたしの杞憂でした。
リオンと太郎兵衛はすぐに仲良くなりました(そもそも杖を使うことに抵抗なんてなかったんだと思います)。
リハビリも大人しく、むしろ積極的に行きました。
リハビリ室では更にもう1本杖を使って歩く練習もしました。
目もよく見えていない上に、まだ声も出せない状態でよくやっていたと思います。
リハビリの先生が「最終的に杖は1本しか使わなくなると思うから2本目は買わなくていいよ」とおっしゃったとき、わたしは『リオンは絶対に買うだろうな』と確信しました。
そして案の定、リオンは勝手にもう1本杖を買いました。
とにかく早く歩きたかったのだと思います。
また名前をつけるのも面倒でしたし、もはや名前をつける意味も見失っていたので、これを2代目太郎兵衛としました。
同じ理由で車椅子にもライオン丸と名前をつけたのですが、こちらも杞憂に終わりました。
杖、車椅子、障がい・・・それらをリオンは拒絶することもわざわざ受け入れることもありませんでした。
今の自分はどんな状態か、何が必要か、どうすればいいのか。
ただそれだけでした。
シンプルな考え方ですが、なんだかアスリートっぽいなぁと思います。
こうして改めてライオン丸と太郎兵衛について書いてみると、余程わたしのほうが車椅子と杖に対して拒否反応を示していたように思います。
リオンに話したことは、半分は自分にも言い聞かせていたのかもしれません。
確かに、リオンが初めて車椅子に乗っているのを見たときはショックでしたし、その車椅子を押すことになったときはとても現実のこととは思えませんでした。
杖を持つことは、障がいを持つことと同じでした。
・・・だとすると、それらに対して名前をつけるというのは、今考えてもすごくいいことだったんじゃないかと思えないこともありません。
リオンと太郎兵衛はどこへ行くにも一緒です。
ライオン丸で移動するときも太郎兵衛は手放せません。
エレベーターのボタンに手が届かないときは太郎兵衛で押したりしています(便利です)。
大谷選手のバッティングについて(こちらが聞いたわけでもないのに)解説してくれるときも太郎兵衛を使っています。
太郎兵衛をゴルフクラブに見立てて見えないボールを打っていることもあります。
最近ではもっぱら太郎兵衛をバーベルに見立ててベンチプレスの練習に使っていますね。
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今でも何かを受け入れたり乗り越えたりはしていません。
だからといってそれは逃げているわけでも受けとめているわけでもありません。
いろいろあったはずなのに、お互い根本は何も変わってないんだと思います。
おかげさまで、今ではわたしと太郎兵衛も仲良くやっています。