初代ライオン丸

 こんにちは、オカメです。
今日は車椅子について書いていこうと思います。


リオンは普段杖を使っていますが、車椅子も持っています。
そしてこの車椅子、実は名前がありまして“ライオン丸”といいます。


リオンが初めて車椅子を使ったのは病院でした。
病院にはタクシーで向かったのですが、着いたときにはまともに意志疎通ができないほどになっていたので、当然のように車椅子が用意されました。


あちこち検査をするために車椅子を使って移動していましたが、ついに意識も保てなくなり、ICUへはベッドのまま移動しました。


それからいろいろあって奇跡的に回復し、再び車椅子で病院内を移動できるようになりました。


退院してからも車椅子は必要だったので、さてどうしたものかと悩みましたが、台東区の社会福祉協議会でお借りすることができ、あっさりと解決しました。
このときお借りした車椅子が初代ライオン丸です(勝手に名付けました)。


初代ライオン丸はチェック柄の大きな車椅子でした。
ライオン丸に限らず車椅子はそれなりに重さがあって、リオンが乗ると、トータルでわたしの体重の倍くらいの重さになります。
普通に押すだけでもかなりの体力を消耗します。
また、歩道も車道も排水溝に向かって微妙に傾いているので、それがとても厄介です。
一人で歩いているときは気にもならないような小さな段差も、車椅子では前輪を少し持ち上げなければいけません。
わたしの力だとそれが難しくて、いつも自分の体が浮くほど体重をかけて前輪を持ち上げています。
それは傍から見るときっとすごく滑稽だと思います。
ですが、こちらは必死なので気にする余裕もありません。


初代ライオン丸を使っているときに怪我をしたことが何度かありました。
ライオン丸でコンビニに行ったときのことです。
入口に段差スロープがあったので正面から入ろうとしたのですが、あのスロープって車椅子用ではないんですよね。
もちろん車椅子やベビーカー、商品を乗せた台車が入りやすいようにと設置されているんでしょうけど、たぶんバリアフリー用に作られたスロープ(駅や病院にあるくねくねしたもの)とは角度が違うんだと思います。
そのコンビニの前にあった段差スロープは少し角度が急だったため、車椅子がうしろにひっくり返りそうになり、それを慌てて止めようとして両手首を痛めたことがありました。
幸い誰かに怪我をさせることもなく、一瞬の出来事として終わりましたが、あの一瞬で段差スロープには注意しなければいけないと学びました。


怪我の話で強く印象に残っているものはもうひとつあって、それは普通にライオン丸で道を歩いていたときのことです。
車椅子を押すときはいつも最大限に気をつけているつもりですが、小さな子供の動きまで予測することができず、気がついたらうしろを歩いていた子供が急に車椅子の前に飛び出してきたことがありました。
こうなると車椅子を思いきり引くしか選択肢はありません。
わたしの足が車椅子の下敷きになろうが、とにかく引くしかありません。
そしてそのまま子供が離れるまでじっとしているほかありません。
なぜわたしはあのときパンプスなんか履いていたのか。
せめてスニーカーを履いていればよかったんじゃないのか。
そう思っても後の祭りです。
けっきょく病院には行かなかったので真実はわかりませんが、あのときわたしの足の小指は絶対に折れていたと今でも思ってます。


小さな怪我の話ですと、ライオン丸に乗っているリオンの足先は今でもしょっちゅうどこかにぶつけています。
これも気をつけてはいるつもりなんですが、ライオン丸を押しているわたしにはリオンの足まで見えないんです。
リオンの足がでかい(29センチ!)のも原因のひとつになっていて、しつこいくらい気をつけているはずなのにちょっと油断するとすぐにぶつけてしまいます。
特によくぶつけるのはエレベーターの中です。
邪魔にならないようにぎりぎりまで奥に入ろうとすると、たぶんわたしが思っている以上にリオンの足が大きいんでしょうね、けっこうな確率で「壁に足ぶつかってるよ!」と言われます。
リオンは足に麻痺があるので、それでもわかるということは、もしかしたらかなりの勢いでぶつかっているのかもしれません。
たまにリオンが「なんか足の爪が割れてる」と言っているのは実はわたしのせいなのでは・・・と思えなくもありませんが、これも真実はわかりません。



初代ライオン丸にはわたしも乗ったことがありました。
リオンが車椅子を使う際にどの道が一番安全か知っておこうと思ったからです。


しかし、それは失敗に終わりました。


まず車椅子は押す以上に自分で漕ぐのが大変で、平らな道をまっすぐ進むだけでも一苦労です。
そして何より怖いです。
少しの段差でも転ぶんじゃないかとびくびくします。
段差はうしろ向きに漕いだほうがうまく越えられますが(うしろのタイヤのほうが大きいので)、うしろ向きに漕ぐのもめちゃめちゃ怖いです。


足が不自由になっても車椅子があれば大丈夫・・・とはならないんだなと思いました。
必要に迫られれば怖いだなんて言っていられなくなるのかもしれませんが、腕の力だけで移動するのは本当に大変です。
足だけでなく体幹にも障がいのある人だともっと大変だと思います。
電動車椅子の購入も検討しましたが、金額や使用頻度、使用できるところなどを総合的に考え、リオンの場合は購入には至りませんでした。


台東区の社会福祉協議会からお借りしていた初代ライオン丸ですが、そんなこんなでとても長いことお借りしていました。
(通常は短期的に必要な方にお貸ししているものなんだと思います。)
何度もお電話したりいただいたり、その度に優しいお言葉をかけていただいて、お返ししたときも嫌な顔ひとつせずに対応していただいて、本当に有り難かったです。


初代ライオン丸との思い出はここには書ききれないくらいたくさんあります。
駅にエレベーターがないことを失念していて、担いで階段を下りたこともありました。
タイヤに巻き込まれてカバンがボロボロになったこともありました。
いろんな失敗がありましたが、退院してから塞ぎ込むことなくどんどん外に出ることができてよかったと今でも思います。
ただ漠然と不安に襲われて何も行動できずにいるより、自分の足が車椅子の下敷きになるほうがよっぽどいいです。
ライオン丸と行動することで、現実的かつ前向きに障がいと向き合うことができました。
何より人の優しさに触れる機会を多くもらった気がします。


大きくて立派な車椅子だったので、きっと今もどこかで活躍していると思います。


  *リオン*
好きな食べ物はフルーツ。
尊敬する人はランディ・ジョンソンとイチロー。
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